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まずは自分の身体の状態と患側と健側を知ろう

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治療のはじめは、まず患者さんの身体を診るところからはじまります。患者さんが玄関から入ってきて、歩いている様子。玄関の段差を上がる様子。そういうところまで、治療者は見逃しません。予診表に症状を書いてもらいますが、この時に、疑問に思ったことは質問します。ですから、この時点で治療者の頭の中には、症状・原因・治療方法などの大まかな青写真ができています。

でもそれでも、ここまでは頭の中で行なう操作ですから、現実には、視診・触診・問診で実際には、治療方法の修正がたくさん行なわれます。これは、患者さんが訴えられる症状と、治療者が、触診によって知る症状とは、必ずしも一致しないからです。実際には治療していくことでわかってくることはたくさんあります。ですから、治療者は、決して、早とちりして決めつけてかかることは決してしません。

でも患者さんは、どうしてご自分の症状が、正確に治療者に伝えられないのでしょうか?そこに「痛みは優先順位をつける」という性格があったり、時間の経過とともに症状は変わるので、なかなかご自分で把握することが難しいのです。でも、わたしたちの治療のいいところは、治療することで患者さんも自分の症状で気づかなかった部分を知ることができます。わたしたちも同様に患者さんの症状と変化を把握することができるのです。

わたしは、よく患者さんに、「ご自分の大切な身体ですから、よく知ってください」というお願いをします。そして、「もし疑問な点があれば、遠慮しないで、その都度、質問してくださいね」というお願いもしておきます。患者さんも治療者も、「まずは身体の状態を知る」ということがとても大切なことだと思うからです。

ところでみなさんは、「患側」「健側」という言葉をご存知でしょうか?こうして漢字にしてみますと、ほとんどの方は、意味から予測がつくのではないでしょうか。「患側」は、わずらう側と書きますから、わるい方の側です。そして「健側」は、健康の健ですから、すこやかな側、つまりいい方の側ということになります。首こり肩こり腰痛をみますと、身体というのは、両方同時に痛みだすということはありません。はじめは、右側か左側かどちらか一方から、症状がはじまるのです。

ほとんどの場合は、右利きの人が多いので、右側が患側であることが原則です。もちろん例外もあります。そのときは、患者さんに仰向けで横になってもらい、両方の上腕骨頭の辺りをぐりぐりと触診してみるとわかります。明らかに硬さを感じます。患者さんに聞いても患側が痛いと訴えます。ですから、上半身はすべて、首・肩・腕、すべて右側が患側であることがわかります。

さてここからなのですが、実は治療者もわかっていないことが多いのですが、腰から下の下半身はどうなのかというと、患側と健側が、ヒックリかわるのです。一般的には、左側が患側で右側が健側なのです。それを知っておくことで、治療者も治療に活かせるし、患者さんも、自分の身体を知ることで、予防やケガなどの危険から回避することができるのです。

ところで、中には患者さんの中で、触診で患側が明らかなのに、ご自分の自覚症状では「健側」の方が痛いとおっしゃる方もいます。これは、症状が長くなり慢性化したり、重症化すると、痛みが両側に及んでくるからです。この場合は、もとの患側は、痛みが麻痺して、自覚症状からはズレてしまっていることがほとんどです。そして、その状態はとても危険な状態であることは申し上げるまでもないことだと思います。症状は更に重症化していきます。

人間の身体は、本当に不思議ですが、必ずどのような病気でも、はじめは首こり肩こり腰痛からはじまるのです。そして、それでもダメな場合は、神経痛というかたちで、さらなる痛みをもってわたしたちに知らせます。これはまるで、痛みを通して、わたしたちにメッセージを発しているようなのです。みなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、座骨神経痛・大腿神経痛・肋間神経痛・三叉神経痛などがよくある神経痛の代表格です。でもまだ、痛みをともなうだけ、救える手立てはあるのです。

ではこれが更に重症化してくるとどうなるかといいますと、今度は自律神経に症状に発展してくるのです。自律神経といえば、「自分でコントロールすることができない神経」のことですから、その代表格は、心臓・肝臓・腎臓などの内蔵であったり、胃・大腸などの器官であったりするのです。胃や腸の働きがおかしいというのは、その辺から来ているのです。でも怖い話ですが、癌などの大病ともなると、もう「痛み」はともないません。これはメッセージの次元を越えてしまっているからです。そうなることはぜひ避けてほしいものです。

もうひとつ、健側と患側が自覚できなくなる患者さんの場合をお知らせします。それは、鎮痛薬や精神安定剤等の薬を服用されている患者さんです。こうした患者さんは治療者は、要注意です。それは本来痛みを感じるはずの部位に痛みを感じないという状況が生まれているからです。こうなると患者さんの自覚症状は、健側と患側が見事にかわってきます。この場合も、もちろん治療できますが、治療期間が、薬を服用されていない患者さんに比べ、少し長くかかることを、治療者も患者さんも知るべきです。やはり、鎮痛剤などの薬は、鍼治療の妨げになることは明らかなのです。