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プレジデント「医者自身が病気になったら治療拒否したいケース30」に思う

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【4】拷問に近い・吸引
口の奥にチューブを入れて唾液や痰を吸引する。患者さんに苦痛を与えて咽せさせたところで痰を吸引する場合もある。「拷問に近い。絶対やりたくない」。


30のケースがある中で、わたしが一番目を引いたのは、このケース4。多分、多くの方はこれがどんなもので、どうしてこういうことが行なわれるのかその意味も知らないのではないかと思う。

吸引させるというのは、もはや患者さんに、唾液や痰を飲み込む力が失われているからである。つまり飲み込む力がないということである。ではどうして飲み込めないかといえば、嚥下筋(えんげきん)=飲み込む筋肉が働いていない。つまり、嚥下筋を働かせる神経や脳の働きがすでに失われているからである。

嚥下筋の機能を失うことは、直接、生命に関わることなので、おそらく多くの患者さんの家族は、拷問のように辛そうであることを分かっていながら、目の前にある生命の灯火を消してしまうことは、まず考えられないことではないだろうか。

しかし、このような患者さんは、たぶん、ほとんどが脳梗塞を起こしており、喋れないし、意志を伝えることができない。こうなると、多分、この患者さんは、嚥下筋だけではなく、全身他にもいっぱい、脳や神経の死が始まり、動けない、喋れない。もちろん食べれない。栄養も何にもない点滴だけが、かろうじて、生命の灯火を維持しているだけなのである。

もし、医者が、このような事態をはっきり、患者さんの家族に伝えていれば、おそらく判断は変わっていたかもしれない。一体この時の医療の役割は、何なんだろうか?患者さんを苦しめ、見守るその家族を苦しめる。1ヶ月も、助かるという希望もない患者さんに点滴や、辛い吸引を施すことは、もはやそれは医療ではないだろう。

QOL(クオリティー・オブ・ライフ)という言葉が、浸透しはじめて以来、終末医療のあり方も見直されはじめている。でも現実は、まだまだで、ほとんどが、医療に未知な患者さんの多くは、事態が、よく分かっていないことが多い。だから、医師は、どんなに忙しくても、患者さんや、その家族に、患者さんの容態を詳しく、分かりやすく伝える必要がある。