自然治癒力が主、治療は従。

 治療院に重症の患者さんがみえることがある。昨日も座骨神経痛でみえた患者さんがいた。痛みが強いため、仰向けに寝ても、痛い方の足がまっすぐに伸ばせない。前回は、右足だったのが、今回は、左足に強く症状が現れている。治療中もかなり痛そうな様子である。座骨神経痛の治療は、私にとってそれほど困難な治療ではない。ただ今回は、一つ、重大なミスをしてしまった。それは、次の日の治療の約束をしてしまったことだ。患者さんにしてみれば、痛いから早く楽にしてほしい。治療者の方も、患者さんの痛がる様子を見るのがつらい。早く楽にしてあげたいと思う。ところがここに大変な過ちがある。私たちの治療で一番大切なものは何かというと、休養である。その次が、正しい治療なのである。通常どんな重症の患者さんでも「次の治療は、いつ頃うかがえばいいですか?」と聞かれたとする。そうしたら、いつもなら、「1週間後に来てください」というのが、私のセオリーである。仮に、性急な患者さんがいてとか、早く治療しなければならない事情があるときでも、翌日の約束はしない。「せいぜい3日後にお越し下さい」これが限度だ。では、なぜ1週間後なのか、その理由を説明したいと思う。

 凝りの症状について以前お話ししたことがある。筋肉には、アクチンとミオシンという二つの筋肉繊維があって、疲労、緊張、ストレスが原因となって筋肉が収縮し硬結する。つまり、いずれの原因でも疲労物質である乳酸が、二種類の神経の束を、ベットリとくっ付けてしまうからである。脳の方では、筋肉の繊維を、引き延ばすために、「伸ばせ!」と命令するが、くっついた繊維が伸びることは容易ではない。そこで今度は、非常事態と感じると、発痛物質をだし本人の自覚を促すのである。これが、凝りという症状であり、凝りがひどくてつらいという症状が生じるわけである。前にも説明したが、私の治療は、この二種類の筋肉をいかにして引き延ばすか、緩ませるかが、課題である。でも、硬結した筋肉の繊維を引き延ばす時に、必ずと言っていいほど、発痛物質がまた出てしまうのである。症状が重い患者さんほど、治療する時に痛がるのは、こういう理由からである。肩こりでも腰痛でもただ治してほしいというなら、意外と簡単なことかもしれない。でも、痛くないように治してほしいといわれると、とても難しいのである。それを手伝ってくれるのが、自分自身が本来持っている治す力=自然治癒力なのである。というふうに以前の私は考えていた。 

 ぎっくり腰のような、どんなに痛い腰痛でも2、3日間、安静に寝ていれば、必ず楽になるはずである。特にぎっくり腰というのは、患部の炎症である。炎症を起こしている場合は、治療することにより、更に炎症を誘発させ、治る力が働く前に悪化させてしまうからである。人間の体のシステムというものはすごく良くできているもので、こういう時には、血液の中にある白血球が、静かに炎症を治めてくれるからである。今回の場合は、炎症までは考えないが、筋肉もまた、休養をとることで自然に弛緩する。収縮された筋肉がまた伸びていくことがわかっている。その時間が、最低3日から1週間なのである。だから、人間の体というのは、無理をしなければ、回復するようにシステムが出来上がっている。自然に回復するように神様がつくってくださっているのである。自然界の動物に過労はない。過労しても彼らは必ず休む。休むことで、また元気な体に回復することを彼らは、知っているからである。ところが、一番賢いはずの人間が、最も愚かである。「自分の体には、治す力がある」それだけの理屈が理解できていないようである。何かと理由を付けて、自分の体を痛めつけ、「痛くなった、動かなくなった」といっては、あわてて騒ぎ立てているからである。
 そういう私も今回は、治療を主として考え、自然治癒力を従と勘違いしたことに、大きな過ちを犯したのだ。さいわい、私とこの患者さんには、強い信頼関係があるので、これからも治療は続けていただける。だが、必要以上に発痛物質を誘発して、患者さんにつらい思いをさせてしまったことは、反省として忘れてはならないことである。
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by yakura89 | 2009-01-25 15:31 | 自然治癒力 | Trackback | Comments(0)
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