☆わたしが毎朝、歩く散歩道。時間によっては、このような日差しが映し出される。
病気が「直る・治る・消る」
直る
師匠 「『なおる』ていう字は、いろいろあるんですが、どのような字があるかわかりますか?」
わたしの頭の中では、「治る」というじがすぐに浮かんだ。今のわたしの頭の中は、この字でいっぱいである。治療院を始めてから今日まで、この字で頭の中は、埋め尽くされているかもしれない。そういっても過言ではない。すると、師匠は、ホワイトボードに、3つの「なおる」というじを書いた。
師匠 「まず第一に『なおる』ってこう書きますね。『素直』の『直る』という字です。性格が素直な方は、病気も治りが早い。『医療者が、こうした方がいいですよ』という言葉に、素直に受け止め、誠実に実行しようとする人。やはりこういう方が、早く病気がなおります」
わたしも、確かにそう思う。わたしは、対患者さんとの関係は、けっこう信頼されている方だと思っている。でもやはり、わたしのアドバイスに対して、それを実行してくれるかどうかは、患者さん自身の性格などの問題にもよる。わたしは時々、困っている人から相談を受け、からだの状態を診せてもらうことがある。特にその対象となるのは、身体の軸、背骨と骨盤のゆがみである。意外とこのゆがみがある人が多い。もしこのゆがみが診られると、身体の重心が狂うために、肩こり腰痛の原因になることが多い。「ほっておけばなおる」という考えもあるが、ゆがみは、これまでの生活に何らかの問題があるから生じたのであり、そういう人が、ただ「ほっておけばなおる」ということは、まずあり得ない。
事実を伝えるが、それから、受診行動をおこされる方は、正直あまり多くはない。治療が必要であることはわかっていても、だからといって、すぐには受診する気にはなれないらしい。理由は様々で、今までの治療に関する不信感、時間的なゆとり、経済的理由などであったりする。人は過去の経験から判断することが多く。素直に、治療者の意見を受け入れることが出来ないみたいである。仮に、「この人なら」という直感が働いたとしても、決断し、素直に行動に移すまでには、様々な葛藤が生じるらしい。まずそこに、「直る」か、「直らないか」の大きな第一関門がある。
第二関門があるとすると、どれだけ医療者の指示に従えるかである。多くの患者さんは、過去の誤った生活習慣、からだの酷使、精神的なストレスから現在の症状を引き起こしている。それをどれだけ改められるかが、治癒する方法なのである。これはちょっと厳しいい方かもしれないが、病気や症状は、ほとんどの場合、患者さん自身が、つくり出すものである。痛みや症状は、それを本人に気づかせるためのメッセージである。わたしが考える治療者は、そのからだからのメッセージを患者さんに伝える役目を担っている。でもそれから先は、本人の性格が、大きく道を左右する。やはり師匠がいわれる「性格が素直な方は、病気も治りが早い」というのは、確かである。
治る
一般的に「治る」という字がピンとくる人は多い。ところが、たとえ医療の現場であっても「治る」という言葉は、あまり厳密に語られることは少ない。今から15年前にわたしが師匠に出会い、とても共感したのは、師匠はこの「治る」という言葉を厳密に語られていたからである。
師匠 「人々は、よく病院に行き、病気が治った治ったといいますが、それは、「治った」とは言えません。ただ、薬によって、症状を抑えているだけにすぎないんですね。ですから、その証拠に、季節が巡ってくれば、また同じように病院に通い。同じことを繰り返しているだけなのです」
わたしはすぐに、自分自身のことを言われているような気がして驚いた。わたしは子供の頃から花粉症を患い。毎年毎年、季節になると耳鼻咽喉科に通った。ところが薬というのは、症状が重くなればなるほど、強さが要求され、過去に用いていた、適当な薬は、無効になってしまう。やがてわたしは、用いてはいけない「ステロイド剤」を用いるようになり、それ以外の薬は受け付けなくなってしまった。やがて症状は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性ぜんそくとつぎつぎに重症化し、気づいた時には、ステロイド剤を多量に使用し、「副作用」からそれ以外にも余病を引き起こすはめになった。薬の恐ろしさを知ったわたしは、それ以来、師匠がいわれる。「薬を使用した場合、ほとんどが『治った』とは言い切れない場合が多い」というのが、よくわかるようになった。
だからわたしは、「急がば回れ」という言葉のように、仮に長い道のりのような気がしても、「投薬なし、手術なし」という方法をとることを考えるようになった。わたし自身が、職業を変え、鍼灸・指圧・マッサージの仕事を進む道を選んだのは、「自然治癒力」を引き出すお手伝いをする仕事であることに、誇りと生きがいを感じるようになったからである。だから、「治る」というのは、厳密にいうと、自然治癒力を用いて、自分自身の症状や病気を克服した時にはじめて用いられる言葉である。ということがわかった。
消る(なおる)
わたしは、正直、師匠に教えていただく前は、このような字を用いることは知らなかった。師匠から聞いた話では、最高に高度の「なおる」なのだそうです。
師匠 「病気もケガも不幸もそれらはすべて、気づきのためのメッセージなのです。もし、それらの理由から、苦しんでいる人がいたなら、『因果応報』といって、必ず過去において、原因となる何かが存在するのです。それに気づき、認識を改め、行動を改めることで、その結果、病気が治り、不幸をもたらしてきた現象が消えていくのです」
よく癌などの重病を患ってきた人が、奇跡的にその危機から生還した話を、テレビや本などで知ることがあります。奇跡が起こったのではなく。病気は、起こるべくして起こったのであり、癌が消えたのも、消えるべくして消えたともいえます。本当に不思議なことに、わたしは、信じられないような、事実を体験しました。もし「病気が消る」ということは、物事の真髄を究めた人にしか、与えられるものではありません。そうなれば、最高の治癒と同時に、あらゆる不幸とは無縁の最高の幸福も得られたのと同様なのです。