人間だけが自然の法則に反している
昔から気になっていたことだが、体の不調や故障をを運動不足からだと思い込み、運動やスポーツで治そうと思っている人が多い。はたしてそれは正しいのか?考えてみる必要がある。ついこの間も、わたしが通っている体操の教室に、高年齢の女性が、体の不調があるのにやってきた。「わたし、今日は足が痛いんですけど。がんばります」というのだ。わたしが通っている体操の教室は、確かに体の負担が少なく。ある程度体に疾患や症状を抱えている人でも行うことができる。だから、高齢者も多く、年齢層もどちらかというと高めである。でもこの方は、明らかに膝に疾患を抱えている。同じ教室のよしみで、体を診させてもらったこともあるが、腰痛が顕著で症状的には、座骨神経痛や大腿神経痛がみられた。特に大腿神経痛がひどく、それが原因で膝痛を引きおこしていることは明らかであった。
わたしの目から見ると、明らかにこの女性は、その日、教室を休んで、家で安静にしていることが望ましいと思われた。指導している先生たちも、「あまり無理をしないでください」とは、いっていたがさすがに、「今日は、お休みにしてください」とは、いえないようだ。しかし、この「痛さ」は、「休養をとりなさい」という「体からのメッセージである」痛みの症状がある時には、体は、どのような状態になっているかというと、首や腰などの主要部位が、筋肉は、収縮して固まったような状態になっている。これを「拘縮(こうしゅく)」といっているが、すべて、運動やスポーツは、筋肉を収縮させることである。「ストレッチ」は違うといわれる方もあるかもしれないが、「伸ばしている筋肉」がある時は、「拮抗筋」といって、その反対の筋肉は「収縮」されていなければならないのである。だから、「痛み」を感じている時は、スポーツは、痛みをさらに誘発し、筋肉にダメージを与えることはあっても、それでよくなることはない。「治療」と「休養」が必要なのである。
ではなぜ、このような間違えが世の中には充満しているのだろう。わたしのところへ来てくれている患者さんには、「医師」もいるのだが、腰痛が治る前から「先生、何か、いい運動がありましたら紹介してください?」といわれたことがある。わたしは、慌てて「いずれ紹介させてもらいますが、今は、運動という運動は控えてください。少なくても、わたしが『いい』というまでは、運動はやらないでください」と、お願いした。実は、体の専門家である「お医者さん」でさえ、このような思い違いをされている方が多い。ましてや、「素人」である多くの方は、大半が、「スポーツ運動信仰」に取り付かれ、取り返しのつかない「過ち」をおかされることが多いのではないだろうか。実に不安な状況である。
一方、自然界の動物はどうだろうか。動物も生きている限りは、ケガもすれば、病気もする。たぶん「痛み」を感じることもあるだろう。こういう時は、どうするのだろう?家で飼われているワンちゃんや猫ちゃんなら、獣医さんにみてもらうのかもしれないが、自然界に生きる野生の動物は、どのようにしているのだろうか。とても興味があるところだ。医者も薬もないかれらは、そのような時には、ひたすら自分のすみかから一歩も動かないで、じっと「休養」に専念しているのである。つまり、自然治癒力をが最大限に引き出されるのには、じっとひとつの場所にとどまり、動かないことが、一番いいということを知っているのである。一律に自然界の動物がそのように休養をとることを実行している。それが「自然界の法則」であるからだ。誰に教わったのか、知らないけれど、生まれたときから、「自然の法則」に従い、最善の方法をとっているのである。人間だけが、なぜか、愚かにも自然の法則に逆い、結果、取り返しのつかない過ちを犯している。それは、いったいなぜなのだろうか?とても疑問に思うことがある。