イチローがみせてくれた「未病治」

 ここにきてイチローの7試合欠場を誰が予測しただろうか。「左ふくらはぎの張り」のニュースの報道の後、私は、このブログで「イチローの故障にに見られる日米間の対応の違い」でイチローの身体の状態を「鍼灸マッサージ師」の立場から「見立て」をさせてもらった。詳しいことは前記のブログを読んで欲しい。ここで言えることは、単なる「左ふくらはぎの張り」の問題ではないということだ。イチローが、彼の野球人生の中でも最も大切なときをむかえているこの時に、7試合も試合を欠場しなければならなかった。その理由は、ひとことで言うと「未病治」にある。


「イチロー、復帰は週明け…シアトル紙報じる
サンケイスポーツ - 2009/8/29 7:51

 【シアトル(米ワシントン州)27日(日本時間28日)】マリナーズのイチロー外野手(35)が、左ふくらはぎの張りでロイヤルズ戦を欠場。この日は離脱後初となる打撃練習でサク越えを連発したが、走塁面の不安もあり、4試合連続の欠場となった。復帰のタイミングは球団側に一任しているというイチローだが、「今週末まで無理」と報じる地元紙もあった。

 ストレスのたまる日々が続く。イチローは入念なストレッチ、キャッチボールを行うと、離脱後初となる屋外での打撃練習に臨んでサク越えを連発した。しかし、走塁面はジョギングのみ…。

 「状態? 気の利いたことはいえないですね」

 独特の言い回しの“イチロー節”も影をひそめる。打撃練習の投手も務めたドン・ワカマツ監督(46)は「ジョギングが全力疾走にならなければ…」と復帰のための条件を示した。もっと速く走れるのかという報道陣の問いに、イチローは「うん」とうなずいた後、「できないかもしれない」と続けた。

 離脱当初、イチローは「(欠場は26日までの)3日で、と思っている」と語っていたが、これで4日連続欠場。復帰時期について「球団に止められている? どっちかというとそうじゃないかな」。指揮官も「だいぶ良くなっているようだが、期限は決めていない。焦らずに治してほしい」と完治を待つスタンスは変わらない。

 地元紙のシアトル・ポスト・グローブ(電子版)は28日付で「週末までプレーしないだろう」との記事を掲載。週明け31日(日本時間9月1日)のエンゼルス戦から復帰した場合、残りは31試合。チームのプレーオフ進出が厳しい状況にあり、メジャー通算2000安打(あと11)、9年連続200安打(あと16)の記録達成へも日数的に余裕があることから、無理をさせないようだ。

 「プレーしたい? そりゃ、気持ちはそうだけど、体がどうかというと、なかなか難しい」。開幕8試合の欠場を加えると、今季は12試合でイチロー不在。この日は4−8で敗れたが、欠場した試合のチーム成績は9勝3敗と良好。まずは完治させることに専念してよさそうだ。」


 以上は、8月31日現在の一番新しいイチローの様子を表した記事である。多分、イチローは、早ければ、9月1日のエンゼルス戦から試合に出場することになるだろう。しかし、残り31試合を残して、あと16本以上のヒットを打たなければならない状況は、天才イチローとはいえ、そんなに楽なものとは言えない。しかも復帰後いいコンディションで挑戦できるかといえばその補償はどこにもない。相当な覚悟があっての「7試合欠場」であったといえよう。

 それにしても新聞記事から伺えるイチローのコメントの歯切れの悪さは何だろう。イチローという人はいつでもインタビューを求められた時は、自分の気持や考えをしっかり発言できる人である。ところが上記のインタビューは、まるで人のことでも語るような、はっきりしない様子が伺える。これは、現役野球選手である以上、あまり自分の不調を語りたくないという心理が、そこに働いているからだ。「9年連続200本安打」というメジャーリーグにおける輝かしい大記録を目前にしてもう既にイチローの体力は、今季は、すでに限界にきているからだ。もし許されるのなら、体力からいえば、もう彼は既に一足お先にシーズンを終了して、オフに入ってもいいような状態なのである。そのことをイチローが一番よく知っているからである。

 「左ふくらはぎの張り」は、単なる「張り」とか「違和感」の問題ではない。もし単なる「違和感」や「張り」だけならば、それは病名もつかない。「故障」ではあるに違いないが「ケガ」にも入らない。しかし、ひとたび「再発」となれば、もう取り返しがつかないことは、誰もが理解していることである。だから、この欠場期間というのは、大きな賭け。「大記録への挑戦」であり「今後のスーパースターの選手生命」をかけての残り31試合が、彼を待っているのである。

 「未病」というのは、健康でもないし、かといって病気でもない。今のイチローの状態そのものである。もし彼が、この欠場期間に体力の限界を克服して出場することができれば、これを「未病治」といって、最高の治療方法を私たちに見せてくれたことになる。日頃私たちは、忙しさにまぎれ、身体の声を聴こうともしない。しかし、大切な時だからこそ、自分のコンディションに目を向ける必要がある。もし、取り返しのつかないことになっても誰もその責任を負うことはできないからである。今、イチローがやろうとしていることは、「未病治」そのものである。もし彼が、それを立派にやり遂げることができたなら、私は、今まで以上にイチローという選手に人間としての尊敬を感じることであろう。
 
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by yakura89 | 2009-09-01 04:38 | 未病治 | Trackback | Comments(0)
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