イチローの「左ふくらはぎの張り」を「未病」という

 9月2日、イチローは、8試合欠場の後、残り30試合に出場のためエンゼルス戦から先発登板した。今日は、マリナーズの野球中継がないために、イチローの様子を、見ることはできないが、7回の途中経過では、2安打しているらしい。休場の後、いきなり2安打してみせるイチロー。さすがに並の選手ではない。しかし、私たちはいつも結果だけに目を奪われがちだが、たまにはことの深層に触れてみるのもいいかもしれない。イチローの8試合欠場の意味するものは何だったのか。「鍼灸マッサージ師」としての目で迫ってみることにしよう。

 イチローは今季、開幕から8試合欠場から始まった。その理由は、皆さんよくご存知の「胃潰瘍」の治療と静養にようする欠場であった。本当は、WBC(ワールドベースボールクラッシック)が終わってから、胃潰瘍が発覚したので、もう少し期間は、要してはいると思うが、8日間の欠場である。記せずして今回、イチローが欠場したのも8日間である。しかし、病名はつかなかった。欠場理由は、「左ふくらはぎの張り」。それも当初は、「張り」とはいわないで「違和感」として発表されていた。これはあくまでも、医師が下した診断ではない。つまり、病気ではない。病名がつかなかったからといっても、事態は、決して簡単なものではなかった。むしろ、この時期の8日間の試合欠場は、かなり、慎重さを要する。深刻な事態であったことはいうまでもないことであろう。

 では「病名」はつかなかったが、8日間の試合欠場を要した「左ふくらはぎの張り」を何だったのだろうか。それを私たちの世界では、「未病」と読んでいるのである。「病名」は、つかなかったからといって、決して軽いものだったのではないことだけは、わかっていただけただろうか。「未病」は、大変なことが起こる前の「警告」。大事に至る前の大切な「予防」のチャンスというふうに理解していただこう。イチローが優秀な選手なら、そのイチローについている「トレーナー」も、大変優秀な方だったに違いない。何が優秀だったかといえば、イチローが、「左ふくらはぎの張り」を訴えた時に、ただ単に、ふくらはぎの異変とは見なかったからである。どうして「左ふくらはぎに張り」が起こるのか、それを考え、突き止めるのが、「トレーナー」の仕事だからである。

 おそらく、毎日試合の後、イチローの身体をマッサージして触っていた「トレーナー」なら気付いていたはずである。イチローが、大変に疲れていたことを。左右の腰の張りは、相当なものだったに違いない。試合欠場の時にイチローのコメントで「世界最速のボルトの走りを真似てみたのが、間違いだった」というのが、記事になったが、笑えて楽しかった。しかし、それはないだろう。むしろ、考えられるとしたら、その同じ8月、ヤンキース戦で松井の打った打球を追いかけ、ホームランを阻止するために、外野の塀をよじ上って捕ろうとしたプレー。あれこそ、ふくらはぎを痛める大きな原因となり得るものである。結果は、応援していた野球ファンに、プレーを阻まれ、スーパーファインプレーは成立しなかった。その、がっかりするイチローの姿が、画面に映されたのが印象的であった。あれが採れていれば、おそらく彼の疲労度は、違ったものになっていたかもしれない。しかし、そうでない場合は、最大級の筋に対する負担となって帰ってくる。

 でも考えてみると、そうでなくてもイチローは普通の選手とは、体力の消耗度が並外れて違う。イチローが、これだけヒットが打てるのは、桁外れの俊足を生かしての「内野安打」があるからでる。また、最近は、あまり無理しているとは思えないが、足を生かしての「盗塁」。そして、超美技といわれるスパーファインプレーも相当な体力を要すること。あの野球選手の中にあっては、華奢な身体のイチローに、どれだけ莫大な体力が必要かが、理解できるというものだろう。面白いもので、素人は、「左ふくらはぎ」といわれれば、そこだけしか注目しない。しかし、私たちのような仕事をしていると、故障を起こしているのは、「左」だけではなく「右」にも同様な、それに近いハリや故障があるのがわかる。しかも、痛めた箇所が、「ふからはぎ」なら痛めている神経は、おおもとは「座骨神経」である。それでは、足全体の筋肉が、貼っているだろうことも容易に想像できる。だからイチローは、「走る」ことができなかったのである。更に、痛めているのが「座骨神経」だとすると、「大腰筋」「腸筋」の拘縮が原因だろうことや、イチローの腰が、相当疲労の限界にきていた。ということまで簡単に推測が及んでしまう。

 だから、イチローは、復帰をはたすために8日間を「治療」と「休養」にあてたのである。また、休場の間、スパイクを脱いで軽い素振りやバティング練習を行っていたのも、腰から下半身の負担を軽くするためである。また、こうした、いつもやっている運動を軽く行うことで、筋肉を緩める。拘縮した筋肉の凝りを解き、逆にほぐすことができることがわかっているからである。全ては、「治療」と「休養」というふたつの大切なことが、あまり目に触れることなく、この空白の「8日間」に行われていたのである。今日のエンゼルス戦でイチローは、2本のヒットを打った。そして、マリナーズは勝つことができた。その結果から、おそらく目では見ていないが、イチローの「未病治」は、成功したのでないかということが、想像できる。私たちは、イチローという選手の活躍から、日頃勇気や希望をもらっているが、それだけではなく、彼から学ぶことが、いろいろあると思う。私の場合は、今度のことで、「未病治」がいかに大切かと言うこと。また、それを実行できる精神力の強さに改めて驚かされた。人はこのような窮地に立たされた時に真価が問われるものである。だから、私は人間的にもイチローに、すごさを感じるのである。

 
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by yakura89 | 2009-09-02 13:32 | 未病治 | Trackback | Comments(0)
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