現代版「一寸法師のはり」

☆専門学校時代に使っていた「刺鍼練習器」。鍼の実技練習は、この練習器に鍼を刺すことから始まった。A・B・C・Dは、硬さによる難易度を表している。
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 昔から「鬼に金棒」というが、私は、「鬼に金棒=指圧師に鍼」だと思っている。つまり、強いものの組み合わせということで「無敵」ということだろう。私の持っている国家資格の正式名称は、「あん摩マッサージ指圧師」という。厳密にいうと3つとも似ているが違う種類の手技である。その中でも「指圧」は、最もシャープな効果を持つといわれている。治療効果は全て種類が異なるが、刺激効果の強さという順から言ったら、指圧・あん摩・マッサージということになるかもしれない。それに「鍼灸師」は、鍼とお灸を使うが、シャープな強さ・切れ味という点では、「はり」は、大変素晴らしいものである。だから、私は、指圧師に鍼を持たせたら、それこそ「鬼に金棒」ということになるのだと思う。私たち「鍼灸マッサージ師の強み」は、この二つの強烈な武器を持っている点にあるといっても過言ではない。

 ところで皆さんは、「一寸法師」の話をご存知だろうか?「室町時代の御伽草子(おとぎぞうし)のひとつ。背丈が一寸ほどの主人公が、鬼退治をし、打ち出の小槌(こづち)の力でりっぱな若者になり、公家の姫と結婚し中納言まで出世する」というお話である。私の「指圧師に鍼」というのは、まさにこの「一寸法師」のイメージと重なり合う。もちろん、鬼がしまの鬼は、患者さんの重症な患部である。そこに天下無敵の鍼を刺し、強烈な敵をやっつける。それが私の現代版「一寸法師のはり」なのである。一寸といえば、約4センチメートル。だからその一寸法師が使ったものは、本当に短い「はり」である。それで、鬼がしまの鬼を退治したというのだから、昔の人の発想はなんて、すごい想像力だったんだと感心してしまう。だけど「針小棒大(しんしょうぼうだい)」という諺もある。「針は、ホントに細くて小さなものだけど、その効果は、棒のように大きい」。これは全くに鍼治療に使う鍼にも同じことがいえる。だから、一寸法師が、針で鬼を退治したという話も、私にはまんざらウソやデタラメのお話とは思えないのである。

 そのお話は、きっといつかまた日を改めて少しずつお話しさせてもらうが、今日は、その「一寸法師のはり」の師匠のお話からである。「一寸法師」の師匠は、肩書きは、「指圧師」。実は、鍼灸師の資格を持っていない。しかし、「ひとつのことを極めた人なら、なんでもできる」というのが、私の師匠の持論である。実際、私は、鍼灸師でもない師匠から、どれほど多くの鍼治療のヒントをいただいたかわからない。またこれからも、どれほど多くのことをご指導いただくかわからないだろう。例えば、鍼灸師にとっては、大切な「ツボ」。正式には、「経絡経穴」というが、師匠は、昔からこのようにいわれていた。「『腎ゆというツボは、第2・第3の腰椎棘突起間の外1寸5分に取る』というような覚え方ではダメだ」といわれるのである。つまり、「人のツボは、厳密には人によってみんな違っている。また、同じ人でもいつもツボの位置が同じとは限らない。だから、さっと自然に自分の手が、導かれるようにして、ツボにさっと手がいくようにならないと人の身体を治療できない」といわれるのである。これは、この治療の世界の人にとってはとんでもないことであり、誰からも聞いたことがない。しかし、鍼治療の実際は、まさにその通りなのである。知識として学校で教えてもらったことと臨床とではかなりの隔たりがあるのを感じている。

 もし初診の患者さんがみえたならば、私はまず最初は、手技を用いる。指圧師としての私は、まずは、治療しながらでも患者さんの身体に触ることで症状を感じ取り、治療点を発見していく。それが、オーソドックスの治療のパターンである。だから、ひと通り自分が考えていた手技の治療が終わってから、「どうしてもこのツボに鍼が打ちたい」そういう衝動が生まれてきた時に、鍼を打つ。この前、患者さんを治療させてもらいながら、痛みを和らげるために必要さから治療途中で鍼を打った。しかし、その位置は、学校で習ってきた経穴(つぼ)の位置とは、はるかに異なるものであった。我ながら、あまりの違いに驚きを感じた。これまでなら、このツボは、◯◯骨から外に◯寸◯分でとっていたものが、まるで、意識から取り外された。実際患者さんの腰に打たれた鍼の位置を見ながら「違えば違うものだなあ」それが、私の実感であった。ところが、私が自信もって打った鍼は、的中し、見事に鬼がしまの鬼を退治してくれたのである。これは、現代版「一寸法師のはり」の第一話である。これからも「一寸法師のはり」は、まだまだ、続くことだろう。鍼治療の世界は、「一寸法師」の話のように不思議なことでいっぱいである。自分でも切りがないほど続きそうな気がする。
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by yakura89 | 2010-01-28 06:30 | 鍼灸指圧マッサージ | Trackback | Comments(0)
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