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「治療家としてあゆむ道」・その2、哲学者としての道

☆地上の楽園。マレーシアに近いタイ。エコリゾート「ピラマイ」。山の景色を見ながら、海をみながら、のんびりとお茶を飲む。人生には時々、こんな命の洗濯が必要です。ここは、そういう時間にぴったりの場所です。
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 ある日師匠は、わたしに言いました。「治療家としてあゆむ道には、レベルの段階として三つの道がある。その第一は、科学者としての道。次が、哲学者としての道。そして最後は、宗教家としての道だ。最終的にはそこにたどり着く」興味がある内容の言葉だったのでとても心に印象深く残りました。そして、わたしなりにこう解釈しました。

 最近わたしがみたレンタルビデオに日曜劇場「JIN」というお話があります。現代の外科医が、幕末の時代にタイムスリップしてそこで、活躍するというお話ですが、武田鉄矢ふんする医者の緒方洪庵が、「国のため、道のため」というような台詞をさりげなく言うのですが、とても素敵な言葉で感動しました。医業は聖職です。おそらく医療をやっている人なら、みんなこころのどこかに「世のため、人のため」という気持ちはあると思うのですが、「道」という生き方が、「仏教の禅」とか老荘思想の「道教」のようにとても哲学的な意味が、そこにはあるように感じました。黒沢監督の作品の中にも「赤ひげ」という江戸時代のお医者さんの話がありますが、三船敏郎さんがふんする「赤ひげ」の「ひげ」が、とても「哲学」的なものを感じさせます。現代のお医者さんはどうかしりませんが、やはり、本来の医者は、聖職者であり、生き方そのものが、とても「哲学的」なのだと思われるのです。

 わたしは医者ではありません。指圧鍼灸師ですが、その指圧鍼灸の学問としての源は、東洋医学です。その東洋医学の歴史は大変古く。西洋医学が、ここ数百年の歴史とすると、東洋医学な、少なくても6千年以上の歴史があるのです。そして、「陰陽」の考え方などは、老荘思想の「道教」に基づいているのです。ですから、東洋医学そのものが、哲学的と言えるのです。哲学的と言える以上、そこには広い世界観や宇宙観が存在します。そして、「人は、いかに生きるべきか?」どのような生き方をすることが望ましいのかを考えさせてくれるものだと思います。そういう意味で、指圧・鍼灸というのは、とても深い世界なのです。

 例えば、「陰陽」って何を意味するのでしょうか?「この世には、相反する二つのものや世界が同時に存在する」ということを意味しています。「天と地」「男と女」「光と陰」「太陽と月」「右と左」どうですか?二つの世界に大別できませんか?「善と悪」「神様と悪魔」「この世とあの世」というのはどうでしょうか?どうですかすごいと思いませんか?人間のからだも「背中が陽」で「お腹が陰」というように、必ず、二つをセットで考えられているのです。そういう考え方ってとても面白いと思うのです。ですから、東洋医学を勉強していくと、なるほどなあと驚かされることがいっぱいあるのです。少なくとも、中国六千年の歴史と人間の経験や叡智(えいち)がそこには生きているのです。孔子は学問の基礎を「温故知新(おんこちしん)」=「故(ふる)きを温(あたた)めて、新しきを識(し)る」といわれています。やはり、「医学」も単なる知識の集積ではなく。そこには、生きている人間の知恵が必要になってくる。だから、治療家の第二の道は、哲学者の道でなければならないのです。

 ところで、現代は、緒方洪庵や「赤ひげ」のような医者が少ないのではないでしょうか?それは、「お金がすべての世の中になってしまったから」と言われれば、それまでですが。わたしが思うに、わたしが専門学校にいるときもそうでしたが、いつもいつもテスト・テストで、覚えなければいけないことがいっぱいあって、知識を暗記することに明け暮れていました。そうです、「考える」暇がないのです。本当は、もっと広い世界を視野にいれ、物事を太極的に考えられるようにならないと、本当にはバランスのとれた人間にはなれません。ましてや、医師は、いくら大学6年間といっても、知識の吸収に追われてしまうと、どうしても「考える」という時間がありません。ですから、医療に何が大切か?どうすると人は病気になるのか?病人にとっていったい何が必要なのか?そういったものの見方が、どうしても薄くなってしまうのだと思います。やはり、医者も指圧鍼灸師も治療家である以上、病気を診る前に人を見る目を持たなくてはならないと思うのです。そういう意味で、師匠は、「哲学者としての道が必要だ」と言われたのではないかと思うのです。
by yakura89 | 2011-01-29 11:41