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「正しいことは言わないで下さい」

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029.gif「正しいことは言わないで下さい」

この前、師匠は、わたしとの会話の中で、こんなことを仰ったんです。「正しいことは言わないで下さい」もし、以前のわたしだったら、意外な感じを受けたとは思いますが、その時は、そうは思いませんでした。

師匠が次に仰ったことは、「争いがおこるからです」確かそうですよね。「正しいこと」というのは実に難しいです。それは、人によって「正しいこと」が、みんな違うからです。だから、「正しいこと」を根拠に、自分自身の考えを主張すれば、やっぱり、争いって起ると思います。これまでもそういう経験はいっぱいしてきました。それは個人であっても国家間の問題でも同じです。戦争ってそういうことから起るんでしょうね。歴史的に繰り返されてきた「宗教戦争」なども、実にこの最たる例ではないでしょうか。

でもわたしの師匠は、こういう例では例えることはしません。なぜならこういう例では観念的に理解することはできますが、それはあくまで頭レベルでの理解になってしまうからです。師匠はこのようないい方をされます。ある20代の若い人が、80代のおばあさんに向かって「おばあちゃん!」っていったとします。「おばあさんは、ちょっと不機嫌な顔をされて、何も返事をされなかったそうです」若い方は、「どうして?おばあちゃんは、おばあちゃんでしょう。おばあちゃんに対して、『おばあちゃん』って言ってはいけないの。わたしは間違っていないでしょう?」といわれたそうです。

そうです間違ってはいません。でも、この「おばあさん」の身になって考えると、「つらいんです。悲しいんです」わたしも今年つい最近「シニア」になりましてね。感じることがあるんですね。わたしは、ずっと若いときから、変わっていないなって思うんです。まだまだ若いつもりでいるんです。気持ちは20代くらいにね。でもやっぱり鏡を見ると、顔のしわやシミ、髪の毛の白髪が、やっぱり、老いたことを教えてくれるんです。だから、この若い人から「おばあちゃん」って言われた人の気持ちが、痛いくらいよくわかるようになりました。

わたしは、正確には、この20代の若い人の気持ちもわかります.でも、この80代のおばあさんの気持ちも両方がよくわかるんです。でも残念ながら、この20代の若い人には、80代のおばあさんの気持ちは、経験がないからわからないのです。わかるのは、これから30年か40年後なのです。

師匠はこの会話の最後にこのように言われました。「相手が幸せになるようなことを言ってあげて下さい」って仰るんです。「このおばあさんには、『おねいさん』って言ってあげたらいいんじゃないですか?そうしたらきっといい笑顔と、いい返事が返ってきますよ」って付け加えられるんですね。いつもそうなんですが、この師匠との会話は、わたしにいろんなことを考えさせてくれました。でも、これが一番いい言い方なんだなってわかりました。

まず、言葉は「言霊(ことだま)」だと呼ばれます。とても大切な物です。ところが、自分が「正しいこと=事実」だと思っていることでも、それは、「真実」や「真理」ではないんだなって言うことです。それから、よく「相手の身になって」って言うけど、ほとんどの場合、相手のことがよくわかっていないのが、もうひとつの事実です。そういう場合が多いのではないでしょうか。だから、師匠は、わたしのレベルでもよくわかるように、わかりやすい例えを用いて教えて下さったと思うんです。